孤独な葬儀 (from update-NL)

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アムステルダムには、「孤独な葬儀」という詩人集団がある。芸術家であり詩人であるF・Starik(F・スターリック。写真)が2002年に創立したものだ。

今ではこの街のほかにも、ユトレヒト、デン・ハーグ、ロッテルダム、そしてベルギーのアントワープにそれぞれの「孤独の葬儀」があり、各街のコーディネーターを中心に活動している。

彼らの役目は、それぞれの街で孤独死した人のために詩を作りその葬儀で朗読することだ。
アムステルダムでの孤独死は、年間約15〜20人。身よりのない老人、変死、殺害死など、その死因や状況はさまざま。葬儀埋葬には、市の職員の他「孤独な葬儀」の詩人たちが交代で参列する。質素ながらもひととおりの葬儀が執り行われ、花輪も手向けられる。
孤独死した故人の処理は市の役目。だが一通りの儀式を丁寧に執り行う市は少ないと言う。

「この世には運の悪い人たちがいる。まともに生きていけなかった人もいる。だがその人生は無価値だったかと言えばそうではない。だから、せめて死に際しては尊厳を取り戻して人として葬られてほしい。そんな思いからこの活動を始めた」とスターリック。

葬儀費用だけではなく、詩人へのギャラも市が負担している。
コーヘン前市長に続いて、ファン・デル・ラーン現市長もこの活動の支援者だ。ファン・デル・ラーンは就任の際に「孤独死した人の葬儀で詩を朗読する詩人たちの活動は、街の新しい伝統として守りたい」と語った。
そんなアムステルダムの方針について、「アムステルダマー(アムスっ子)として、こういう人間的な行政の姿勢を誇りに思うね。僕たち詩人も、一期一会の気持ちで毎回詩を作っている」とスターリックは言う。

阪急コミュニケーションズの「PEN」で、小さなニュース記事として掲載するために、スターリックに取材を申し込んだ。
約束の時間より5分ほど遅れて黒いスーツで登場したスターリック。
聞けばその直前も葬儀に参列していて、その足で約束の場所まで来てくれたのだという。
「今日見送ったのは、ナイジェリア人の32才の青年。コンドームに詰めたコカインの塊をいくつも飲み込んで密輸を試みたが、途中でそれが胃の中で破裂して死んでしまった。”あの業界”で長生きするのは、至難の業さ」。

(こうしてコカインを体内に潜ませて密輸する人を、オランダ語では「ボレチェススリッカー」(球を飲み込む人という意味)という。コカインをコンドームに詰めて、ピンポン球のサイズを{たぶん。実際には見たことがないので写真を見て想像してます}少し楕円形にしたような塊をいくつも飲み込み、目的地で排泄。100こ以上の塊を飲み込む人もいるという。体内でこれが破裂して死亡する事故は頻発している。このナイジェリアの青年もボレチェススリッカー)

彼らの詩は、定期的に詩集としてまとめられて出版されている。この秋にも新刊が登場する予定だ。
「タイトルは?」と聞くと、
「君は、” 地下最上段”という葬儀業界の用語を知っているかい?」とスターリック。
それがタイトルなのだという。
「日本の埋葬の仕方は知らないけど、こっちでは深い墓穴を掘って棺は何層にも重ねて埋葬する。僕らが詩を捧げる故人はツキに縁のない人たちばかりだが、最上段に埋葬されるっていうのはある意味ラッキーなことなのさ」と言う。
理由を聞くと、
「もしも、だ。ナイジェリアの青年の家族が、彼の死を知りアムステルダムに来て亡骸を引き取りたい、と言ったとする。そんな時に、最上段なら他の人の遺体を掘り起こさずに故人の亡骸を遺族に引き渡せるからね。このナイジェリアの青年も運良く、地下最上段に埋葬されたよ」。

この青年の名前はE・O。
1979年1月7日、ナイジェリアで生まれた。
スペインの滞在許可証を持っていたという。
コカインを詰めたコンドームが体内で破裂し、アムステルダム大学病院で死亡。
市当局はナイジェリア大使館に連絡をとり、故人の家族と連絡を取るように依頼をする。
しかし1ヶ月たった後も家族は見つからず、仕方なくこの街で埋葬された。運良く最上段に。
葬儀で流すために、スターリックは「ナイジェリアの葬送曲」を探したが何も見つからず、結局、「エキゾチックなものを探して、ナイジェリアの彼が一度も聞いたことのない音楽をかけるくらいなら、オランダ式に軽めのクラシックで見送るのが良いのでは?」ということになる。
この葬儀に詩を捧げたのは、スターリックではなく、
クライン・ペーター・ヘセリンクという詩人。
こんな詩だ。

「棺とトゲ」

どこから来たというわけでも、どこへ行くというわけでもない
君に、この世に残した家族がいたとしても
彼らは君の死について何も知らない
そして僕たちはそんな家族の存在すら、知る由がない

予定よりもずっと早く君の体内で漏れ出した
しっかりと密閉したはずの「パワーの素」は、
尖ったテクノパーティーへの道を探してはずなのに
たどり着いたのは君の心臓、そしてそれを破壊した

息をつく暇もなく走り続ける君の心逸に
ようやく終止符が打たれた。そして永遠の旅人である君はもう
怯えながら、飛行場から飛行場へと、
胃に詰め込んで運んだ
高価な陶酔にしがみついて生きる必要はない

僕の言葉はむなしく棺に跳ね返り
多くの謎は隠秘されたままだ
だがもし僕が、この言葉を強引に君に届けようとするなら、
この木棺の破片を鋭くはがしトゲにして、
それをぶすっと目に刺し
君の現実を、例え僅かでも体感するべきだろう。
ただ傍観しているのは、もうたくさんだ

( クライン・ペーター・ヘセリンク作)

「この活動を始めてから9年。孤独死の葬儀を手配する市の担当者とは今ではいい友だちさ。この街にある全ての墓地の穴掘り係や、運搬係(棺を運搬する人)たちとも顔見知りだ。みんな、僕たちと同じ思いで故人を見送っているよ」と言う。そして「僕も含めて、このプロジェクトに関わっている詩人達は、みな口を揃えて、{終わりのないプロジェクト。生涯かけて続けていきたい}と言っている」と、スターリックは胸を張った。

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久しぶりに義父のお墓参りに行くと、
隣の隣のお墓が開いていた。

この深さ、「地下最上段」くらいだろうか。。

このお墓は家族墓のようだけど、こうして準備されているということは、きっと明日葬儀なんだろう。
天気予報によると、明日は晴天だ。

ご冥福をお祈りします。。。。