MVRDV =The Cloud= (from update-NL)

 

ロッテルダムを拠点に、世界を舞台に活躍する建築家集団MVRDV。
東京表参道のGYREを手がけたこともあり、日本でもすでにお馴染みの存在だ。
そんな彼らがデザインした「The Cloud」は、2015年に韓国のソウルに完成予定の複合ビル。スリムな高層ビル2棟が「雲」によって結ばれるイメージで、日光、屋外空間、生活クオリティーなどのパラメーターをベースにしたデザインで、常に革新的な都市観を展開するMVRDVらしい構想だ。
しかし、「このプロジェクトに多くの批判が集まり、MVRDVが謝罪をした・・」という報道が、12月12日の国営放送のニュースで何度も流れた。「9.11のツインタワー襲撃を彷彿させる」として、9.11の遺族らをはじめ、アメリカから抗議の声があがったのである。

 

 

国営放送の取材に応えて=Winy Maas

Winy Maas by RobtHartWiny Maas:「デザインのプロセスの中で、ツインタワー爆発のイメージを意図したことはなかった。このデザインを発表した後、韓国、アジアやヨーロッパからは、非常にポジティブなリアクションを受けた。その数時間後にアメリカで論争が起こった。このデザインによって傷ついた全ての人に対して謝罪をする。だがデザインを変えるかどうかに関しては、今のところ未定。というのも、このデザインを推す意見も強いし、韓国側がどう考えているか今の時点でわからない」

「タワーを繋げることで強度が増し、両タワー間を行き来できる。
そのコネクション部分はピクセル状の雲のイメージで、パブリックスペースになっている」と模型を使ってデザインを説明するWiny Maasの映像をここで見ることができる(オランダ語)。

ネット上でも、賛否両論の論争が繰り広げられている。
「アルカイダの新オフィスか?」という揶揄もあった。
MVRDVのFacebookでも、「(このプロジェクトに関する)報道の嵐が始まり、脅迫的なメールも殺到している。”アルカイダを愛する者”、あるいはそれ以上の中傷も受けた」とし、改めてデザインコンセプトを説明しなおしている。
MVRDVのPR、Jan Knikker氏は、オランダのある新聞に対して「9・11を連想するというのは、理解できる。我々も一瞬そんな連想を抱いたこともある。だが、それを表現したものでは決してない」と語った。
そして彼らのウェブサイトにも、謝罪の言葉が掲載された。

 

以前Winy Maasから話を聞いた時、「我々の建築は、社会に対してコメントするもの。論争を生み出すことは重要」と説明していた。

このイメージCGを見て9.11を連想しない人は、案外と少ないかもしれないとも思う。その上、世界屈指の建築家集団MVRDVがそれに気がつかなかったはずがない。
もしかすると今起こっている論争が生じてしまうことを、彼らは「密かに覚悟していた」のでは、と憶測する声もあるが、Winy Maasは「意図していなかった」と明言している。

国営放送のニュースで流れたMaasによる説明を聞けば、MVRDVらしいプロセスと都市論によって誕生したデザインであることがよくわかる。
そもそも常識ある建築家が、住居も入る高層ビルを9.11の光景をモチーフにデザインするなんて考えられないが、「あり得る」という前提の元に「病的なジョーク」と非難をする声もある。

このプロジェクトを巡る論争は、エスカレートし、悪意に満ちた意見がインターネット上にあふれ出している。
このデザイン(あるいはMVRDV)を批判するアメリカの声に対する批判(「世界はアメリカを中心に回っているわけではない」「(韓国という)人の国のことに口を出すな」、など)や、そんなヨーロッパやアジアの”アメリカ観”を攻撃するアメリカの声も多い。中傷や揶揄は至って過激だ。

「連想」とは、個人の生活や体験によって強く左右されるし、明解なボーダーを設けられないグレーゾーン。そんな「ビジュアルイメージ」が、過激な社会論争の引き金にもなることが改めて浮き彫りになった。