Studio Job = “Freedam of form” = 1 (from update-NL)

スタジオ・ジョブが主張した、「フォルムの自由」をめぐる論争

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(C) VARA De Wereld Draait Door

今回は、デザイン好きな人向けのレポートです:

タイムマガジンが「今、世界で最も影響力のあるデザイナー」と賞賛するオランダ人デザイナーデュオ、スタジオ・ジョブ。ヨブ・スメーツと、ニンケ・ティナゲルの二人組で、ベルギーのアントワープを拠点に活躍している。
ボルトでアイコニックなデザインと、物議を醸し出すテーマで大胆不敵な作品を次々と生み出しす彼らは、世界中のデザイン・アートファンに注目されている。

少し前になるけれど、その彼らが2日連続で、ウィークデーの超人気トーク番組「De Wereld Draait Door」に出演して話題を呼んだ。1日目は12月6日。ヨブとニンケが揃って出演。
現在開催されているフローニンゲン美術館でのソロエキシビジョンや、ビクトル&ロルフとのコラボレーションなど、比較的一般的な紹介だったのだが、これから作られる予定のある「フェンス」のデザインと、フローニンゲン美術館が展示することを拒否した「テーブルクロス」の話題になると、出演者一堂会話が白熱した。
「フェンス」は、スタジオ・ジョブの作品を多く集めているアートコレクターからの発注で、
その人物がサンドフォード市(放映ではアムスの郊外と言っている)の外れに所有している土地を囲むための塀。
「テーブルクロス」は、バラック、線路、壊れたメガネ、そして骸骨がモチーフになっている。
どちらもテーマはナチスの強制収容所だ。

このふたつの作品をめぐって、放映後もソーシャルメディアなどで論争が白熱したため、
番組は、翌日7日、再度ヨブ・スメーツを招待。大手新聞で芸術評論をしている、芸術史家トレーシー・メッツも同席していた。
メッツ女史は、6日の放映の最中に「なんて安っぽい、スタジオジョブのPRトリック!」という批判のツイートをしたひとりだ。

デザイン雑誌、新聞、ウェブニュースなどでもこの論争は取り上げられた。
論点はもちろん、オランダ(ヨーロッパ)社会の究極のタブーであるホロコーストに、このように気安く触れて良いのかという点で、大半の記事がスタジオ・ジョブの、デザイナーとしての「良識」を批判した。
そして12月の末には、デンハーグにあるCIDI(イスラエル・インフォメーション&ドキュメンテーションセンター)が、「フェンス」の建設に対して許可を出した行政担当者に、この建設許可を却下するように要請したことを発表した。発注者のアートコレクターも、新聞やCIDIのHPに実名が掲載されるなどの影響をうけ、最終的にフェンスの建設を中止した。

この論争は、いろいろな意味で興味深かったので、その部分をざっくりと紹介します。
番組はもちろんオランダ語だが、両日分とも10分弱と短く、問題の作品のデザイン画も見られるので、よかったら番組を見ながら読んでみてください。
まずは1日目の12月6日分から。

文の間の数字は、だいたいのタイムコード、
そして
P=プレゼンテーター、J=ヨブ、N=ニンケ、C=女性プレゼンテーターです。

12月6日の放映を見る

作品の紹介
2’15~
フローニンゲル美術館の展示会場の様子
2;56~
P:あるアートコレクターが、アムステルダムの郊外に持っている自分の土地のために塀をデザインしてくれ、って発注したんだよね?で、君らはドイツの強制収容所を彷彿させる塀をデザインしたわけだね?
J:うー、そうは言えないと思うね。
P:じゃ、ちょっと見てみよう
3;07~
P :これは有刺鉄線、煙突、そこから煙がでてる。そして鐘。そこにはラテン語で「各人には各人のものを」(ドイツ語訳はJedem das Seine)と書いてあるんだよね?
J:そうだ
P:それは、(ワイマル郊外にある、ナチスの)ブーヘンヴァルト強制収容所の正門に書かれているフレーズだね?
3:28〜 正門にレリーフされたフレーズの映像
N:でもこのフレーズ自体に、そんなにヘビーな意味合いはないわ。

論議白熱

P:発注は具体的になんだったの?
J:その人物が所有する土地に塀を作ってほしいということだった。
僕たちのタスクは、「塀」というものに対して根本的な問いをなげかけること。
塀という存在は、社会的にも決して自慢できるようなしろものじゃない。場所を囲み、隔離し、人を閉じ込めるものだ。
僕たちの作品は、いつでもアイコニックなエッセンスを追求している。
いつものように、「塀」のエッセンスを徹底的に追求していったら、必然的に強制収容所(というテーマ)に辿り着いたのさ。
P:発注者はこのデザインに満足している?
J:よいコレクターは、そういう観点でものを見ない。
よいコレクターとは、アーティストに創作の自由を与えるものさ。
P:いや、でも発注者は、このデザインに満足しているのかい?
塀ってことは、公共の場にも面しているよね。間違いなく論争を呼ぶよね。
J:もちろん僕らは極端なものを追求している。コントラストを追求している。冨と貧困、善と悪とかね。(「塀」を悪と定義したとき)何が僕らの社会の中で悪なのかと追求する。その結果、ここに辿り着くんだよ。(5;09)

中略

N:デザイナーは、いつもグッドニュースだけをもたらす存在である必要はないわ。
J:デザイナーって、なんらかの解決策を導き出すことを期待されている。イスだったら座り心地のよさとか、リモコンをつけることで便利になるとかさ。だが僕らは、そんな答えを出すんじゃなくて、問いかけをしたいのさ。
C:ひどい話も伝える必要がある、ってことね。
J:Youtubeを見ると、ツアーバスでブーヘンヴァルト強制収容所に行く観光客の映像だってあるよ。
C:それは違う話でしょう?みんな「イェーイ!ディズニーランドだー」っていう乗りで行くんじゃなくて、それがどれだけ残酷なものであったのかを見ようという意味で行くんでしょう?
N:でもふつうの人たちも、ポップコーンを片手に戦争映画を見ているわ。つまり・・
J:僕らはこういったテーマもぼくらの社会の一部だし、語られるべきだと思うね。忘れちゃいけないから。
P:OK。僕たちはジャッジメントをするつもりはない。なぜこのような作品になるかということに興味があったんだ。次へいこう。

ビクトル&ロルフのショーの映像
7’08〜
P:テーブルクロスを手に「これはフローニンゲル美術館が展示を却下した作品だよね?」
J:(美術館の中にあるカンファレンス施設である)スタジオ・ジョブラウンジで使うのを拒否したんだ。
7’18〜
P:これがデザイン画だね
これは、アウシュビッツ強制収容所がモチーフだね
J:いつも花柄のクロスをデザインしなければならないきまりはないでしょう?
美術館の展示会場では、おっぱいでもペニスでも、強制収容所でもハーケンクロイツでもなんでも見せていいのに、(館内の)50m先にあるジョブラウンジではこれはダメだっていうんだ。
アートとしての展示ならよくて、デザインとしてはだめ、っていうことだ。
P:屈辱的?
J:論争は白熱した。でも最終的には美術館側の意見が通ってしまった。美術館側にとって、譲れない論点だったということだ。
C:デザインはアートよりももっと人を喜ばせるものでないといけない、ってことかしら?
J:ああ。
C:デザイナーに対して失礼だと感じた?
J:失礼ってわけじゃないけど、不自由だと思ったね。
ジャーナリストにだって、一般の人々にだっって言論の自由があるでしょ?
それは重要なことだと思うよ。僕らにだって「フォルムの自由」があるべきだと思うね。


Studio Job “Freedam of form 2/2に続く