Studio Job = “Freedam of form” = 2 (from updateNL)

スタジオ・ジョブが主張した、「フォルムの自由」をめぐる論争 2

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(C) VARA De Wereld Draait Door

スタジオ・ジョブの「フォルムの自由」をめぐる論争の続き。
約10分のディスカッションの要訳です。

P:プレゼンテーター、J:ヨブ・スメーツ、T:トレーシー・メッツ、F:フェリックス・ロッテンベルグ(客席に座っている出演者)

12月7日の放映を見る

P:昨日の出演は大きな反響を呼んだね。君の所にはどんなリアクションが?
J:非常によいリアクションから、そうでないものまで色々。
昨日は、僕たちの作品を紹介するということでの出演だったが、いくつかの作品が異常な形でフィーチャーされた
P:見る人の注意を引いたよね
J:僕らの多くの作品が見る人の注意を引くよ。でも今回はものすごく注意を引いたよね。ツイッターなどでも論争が起こったよ
P:でも論争を起こすことは、デザイナーとして君が望んでいることでしょう?
J:デザイナー、あるいはアーティストの重要な役割のひとつは、人を刺激して触発して、いや、より正確に言えば力をかけて自分の領域を押し広げていくことだと思ってるよ。
P:スタジオ・ジョブと言えば、世界的にも非常に知られたデザイナーという位置づけですよね?(トレーシーにふる)
T:その通りです

レディー・ガガ、ビクトル&ロルフ他とのコラボ作品の紹介映像

P:現在、フローニンゲル美術館では君たちの展覧会が開催されているけど、そこで次のテーブルクロスを紹介しようとしたら、美術館はそれを拒否したんだよね。そのテーブルクロスの映像はこれ。アウシュビッツ強制収容所を上から見たイメージだね。
中央の円の中には壊れたメガネが描かれている。これは美術館側も行き過ぎと判断して展示することを拒否した。
J:これは監視塔、線路、そしてバラックだ
P:トレーシー、美術館の対応について、君はどう思う?正しい判断?
T:それは何とも言えないわね。私も昨日の放映見ていたけど、すぐその場でツイートしたわ。とても安っぽいPRトリックだと思うって。
私たちの社会における、最後の、そして究極のタブーを、非常にチープな形で扱っていると思う。このテーマ(ホロコースト)を扱えば、間違いなく大きな反響を呼ぶ。それはわかりきっていることだわ
P:かんにさわった?
T:さわったわ。これは全く必要ないことだわ。私は彼らの作品をよく知っている。
でもこれは、ほんとうにやすっぽいトリック。こんな簡単なやり方を選ぶなんて
J:でもあの塀はね・・
P:ちょっと待って。紹介する。(塀の映像を見ながら)
この塀は、君たちの作品も多く収集しているアートコレクターの土地を囲むためにデザインした塀だよね。これは強制収容所をテーマ。煙突からは煙がでて、ベルにはラテン語で「各人には各人のものを」と書いてある。これはドイツ語では「Jedem das Seine」で、ブーヘンヴァルト強制収容所(ワイマール市近郊)の正門に掲げられてた言葉だよね?
J:でも、ちょっとググってみたんだけど、Jedem das Seineっていうフレーズは、ノキアやバーガーキングみたいな世界的なメーカーもキャンペーンで使ってるよ。

中略

J:僕たちはここで、「塀」というもののエッセンスをアイコニックに表現しようとしたんだ。
「塀」なんて、自慢するためにつくるものじゃない。それを表現しようとしたんだ。
P:どう思う?
T:あなたは、このように確実に論争を呼ぶってわかっているテーマを使って、スタジオ・ジョブのPRにもいい、と思ったわけ?
J:何度も言うけど、アーティストとして、ボーダーを超えて自分の領域を拡張していこうっていうのは僕のモットーであり、スピリットでもある。

中略

(Jがインセクトタイルの説明を始め、Pがわってはいる)
P:でもそれは違う話だよね。これは、僕らの社会の中に存在する、神経むき出しのままで永遠に癒えない傷だよね。
J:でもじゃ、なぜその傷を(フォルムにして)見せちゃいけないんだ?
P:それはね、多くの人々が望んでもいないのにこういうものと直面してしまう機会を君が作ってしまうってことだからだよ。君のような「ビューティーメーカー」が、なぜこんなおそろしいことをするんだ?って、人々は思うんだよ。
J:僕は「ビューティーメーカー」なんかじゃないよ。デザイナーは、いつもグッドニュースだけをもたらす必要はないと思うね。
T:私はアーティストだってデザイナーだって、人を触発して刺激して、論争を呼ぶのはいいことだと思うわ。20世紀の美術の中には、その優れた例がたくさんある。私が言っているのは、無意味な触発のこと。これは私たちの社会の、最後の、そして唯一のタブーだわ。それを今更「論争しろ」っていうの?
J:そんな風には思わなかった。
T:これを作っておいて、そんな風に思わなかったなんて稚拙だわ。

中略

T:塀のデザインだけど、私にはこのものが作られる意味、ステートメント、場所、そしてこのビジュアル、この作品のビジュアルフォルム全体になんの関連性も見いだせないわ。
P:フェリックス、君はどう思う?(客席に座っている別の出演者に向かって)君はユダヤ人だから、僕らよりもこの問題を繊細にみているのでは?
F:昨日テレビで見たとき、「(ユダヤ人迫害を象徴する)美しいモニュメントってあるけど、これは美しくすらない」、と思ったね

中略

F:ひとつ聞いていいかい?君は、強制収容所で過ごして今生き残っている人のことを想像してみたことがあるかい?
J:僕は・・
F:想像してみたことがあるかい?
J:例えば僕が、壊れた車をモチーフに使う時、交通事故に遭った人の気持ちを考えなければならないということ?
F:それは違う話だね。アーティストというのはエンパシーがあり、自律した存在だ。
君が自律した存在であることはわかったが、収容所で過ごした体験のある人に対してエンパシーを持っているか、ってことだ。
J:僕はエンパシーをもつ自律した存在だ。このために3,4の強制収容所を訪れたよ(フェリックスを振り返る)
F:それは僕の質問に対する答えじゃないね
J:僕はテーマを掘り下げて考えたよ
別の出演者:この発注者はいったいだれだい?毎日このゲートを通るんだよね、その人?
J:発注者は、優秀なコレクター。アートに自由を与える人物さ。
そのへんの、馬鹿なロシア人風のヌーベルリッチじゃない。
P:論議はつきないけど、時間だ。今日はありがとう。
J:次の機会には、もっとほかの作品について話させてほしいな。
P:昨日は結構いろんな作品を紹介したよね。この作品が注目を集めてしまうのは自然の流れだ。悪く思わないでくれ。
J:OK。わかった。
終わり

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1月12日、スタジオ・ジョブのフェースブックで彼らは、今回のケースがこれほどのインパクトを与えるとは認識していなかったと述べ、このために傷ついた人に対して謝罪した。
一方、スキャンダラスな建造物に建設許可を与えた、と非難されたサンドフォード市は、許可の申請の際に提出されたデザインが、番組で紹介されたデザインとはかなり違うものであったと発表した。オランダのデザイン雑誌itemsでも、そのデザイン画が紹介されている。
同記事の中でitemsは、今回のケースをMVRDVの「ザ・クラウド」が巻き起こした論争に似ていると記述している。確かに共通点は多いように見えるが、私はこの2つのケースには大きな違いを感じている。

特に興味深く感じたのは、design.nlに掲載されていたデザイン文化学の教授、ティモ・デ・ライクのコメントだ:「デザイナーとメディアの関係は、これまで相互にとって有益なPRゲームに終始していた。このように、厳しい批判をする態度の欠如が、実はダッチ・デザインの足をひっぱっている。ダッチ・デザイナーはクリティックに慣れていない。それは、オランダにはデザインを厳しく批評する伝統がないからであり、これは改善していかなければならない」
これには心から頷けた。
「デザイナーはいつもグッド・ニュースだけをもたらす必要はない」というヨブ・スメーツの言葉を借りれば、今回の大きな誤算をもって、スタジオ・ジョブは、オランダデザイン界に貢献する論争を引き起こしていることになる。

これからのスタジオ・ジョブの活躍と併せて、オランダのデザイン批評家たちの活躍も期待したい。