シェル裁判

10月11日、デンハーグで、注目の裁判が開かれた。
ナイジェリアの4人の農民が、環境汚染を引き起こしたとしてロイヤルダッチシェル社を訴え、賠償金と汚染域一帯の洗浄を要求した。

シェル社は、ナイジェリアのニジェールデルタ地帯の油田から石油を採掘しているが、原油漏出事故により大規模な環境破壊を引き起こしたとされている。
ナイジェリアでは公正な裁判が期待できないとして、農民達はシェル本社があるオランダで裁判を始めた。来年の1月30日に判決が下る予定だ。

この裁判を受けて、同日の夜のトーク番組が、シェルインターナショナルで環境問題に取り組むアラルド・カステライン氏と環境保護団体の代表者を招き、この問題について討論した。
ニジェールデルタ一帯には、ポルトガルほどの面積の中に合計7000kmの採掘パイプラインが網羅されているのだが、メンテナンスが不十分なため各所で原油が漏出している。パイプライン施設の整備を徹底し一帯を浄化した上で、住民たちに正当な賠償金を支払うべきだ、と環境保護団体の代表者は訴える。
これに対してシェル側は、パイプラインはもちろんシェルの所有物で、整備不良が原因の環境汚染は責任を持って洗浄している。だが、そのパイプラインから大量の原油を盗む組織的な盗賊がいること、彼らによる破壊行為こそが環境汚染の最大の原因だとして、犯罪の取り締まりはシェルの責任下ではないと主張する。そして国連に対しても、ニジェールデルタ一帯の監視強化に協力するように訴えたという。

聞けば、シェルが行う洗浄作業はずさんで、住民たちはかわらず汚染された水を飲み、汚染の中で生活しているという証言が多い。それでも50年に渡ってナイジェリアの経済発展を牽引してきたシェルが撤退することを、誰も望んではいない。環境保護団体代表者は「撤退するべきではない」とも言う。「50年に渡って汚染を続け、今シェルが撤退すれば、あの土地は永遠に洗浄されることはない。ニジェールデルタにとどまり、住民と正当な折り合いをつけていくことが果たすべき責任だ」と訴えた。

シェル側は、番組の中で「飲料水の汚染は、シェルによるものではなく、ナイジェリア国営の石油会社によるものだが、それでもシェルは飲料水確保のための事業を行っている。その上、エイズ対策など、多くの医療事業も行い地域に貢献している」と注釈をいれ、企業としての責任を果たしていることを主張した。
一方、昨年国連が発表したニジェールデルタに関する報告書は、原油による汚染の洗浄が「成功しているとも、効果を上げているとも評価しがたい」というエリアの惨状に言及している。国連環境計画の事務局長も、ナイジェリアの経済成長をもたらした石油産業の代償が、とてつもないものであることを示唆したという。

自然だけではなく、広域に及ぶ地域住民の生活基盤をも破壊した大企業の真の責任とは?来年の判決に寄せられる関心は、大きい。