ヘルト・ウィルダース論争 2

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ヘルト・ウィルダースという名前を聞いたことがあるだろうか?

イスラム教排斥とEU脱退をスローガンに掲げるオランダの超極右党、自由党(PVV)の党首だ。自由党は、下院12議席で三番目、上院10議席で四番目の政党である。
党首ウィルダースのトレードマークは、歯に衣着せない、辛辣で攻撃的なディベートだ。イスラム教を否定する映画を作成したり、本を出版したりするなどして常に過激な論争を展開している。それらは、「差別である」、「オランダに対外的な不利益をもたらす」として、政府からもたびたび”レッドカード”を出されているが、一貫して「全く気に留めていない。自分は間違ってはいない」と声明している。年中脅迫を受けているため、24/7で大勢のボディーガードに囲まれて生活するこの特異な政治家は、海外のメディアでも知名度が高く、その言動には常に注目が集まる。

この自由党、今回の市議会選ではデン・ハーグ市とアルメール市の二市で戦った。結果、デン・ハーグ市では二番目、アルメール市では前回に続いて最大勢力となった。
開票の結果を受けて上機嫌のウィルダースは、集会会場に集まる党員やサポーターたちに向けて力を込めてスピーチ
「みなさんは、この街、そして全国にいるモロッコ人の数が増えてほしいか?それとも減ってほしいか?」
ウィルダースの呼びかけに応えて、会場からは拍手に併せて「減少!減少!」とシュプレヒコールが起こった。その拍手喝采を鎮めて、ウィルダースが「では、そのように進めましょう」と言うと、どっと笑いが起こった。
(この問いかけの前に、「労働党は勢力を増すべきか、減少させるべきか?」と問い、「減少!減少!」、「EUは(影響力を)増すべきか、減少するべきか?」「減少!減少!」という前ふりがある)
この様子がテレビで放映されると、各党首らは、ただちにこの発言を批判。翌日にはムスリム団体を含む多くの機関、個人から、この発言に対する被害届が出された。
有識者らもウィルダース告訴の可能性を探っている。

このような反応は、党内部からも吹き出した。この発言の後間もなく、自由党の国会議員、アルメール市とデンハーグ市の市議会議員、欧州議会議員が続けざまに脱党。これを受けたウィルダースの対応に注目が集まった。
しかし彼は、今回も「全く後悔はしていない。発言を撤回するつもりはないし、詫びるつもりもない」と声明。自由党脱党者の数は、今後も増えると見込まれている。
オランダのニュースは今、この展開で持ちきりだ。

この自由党だが、体制が確立した他の政党とは異なる構造を持つ。正式党員は党首であるウィルダースだけで、それ以外のメンバーは「自由党」という名の連合の支援者ということになるらしい。オランダの法律によれば、国会選挙に出馬できるのは、政党あるいは連合となっていて、連合の定義は、二人以上の発起人と一人以上のメンバーがいること、なのだそう。
彼は、文字通りの独裁者だ。ウィルダース以外の党員には実質発言権がなく、逆らうものは直ちに脱党(脱会)。これまでに多くの党員が、ウィルダースとの見解の相違(=けんか)が原因で離党している。

ウィルダースは、この5月に行われる欧州議会選に向けて、フランスの極右政党「国民戦線」と共に反EUの立場で共闘すると発表し、日本のメディアでも大きく取り上げられていた。
(続く)

写真は、2012年の国会選挙のキャンペーンでPVVが配布していたビラ。ユーロ反対、ということでかつてのギルダー札にウィルダースの写真がプリントされている。

photo: (c) studio frog 2014